セミセルフレジは、近年さまざまな業種で導入されています。レジスタッフは商品のバーコードを読み込むだけで、清算は顧客自身が行うため効率的にレジ業務を行うことが可能です。現金の受け渡しがないため、感染予防対策にもなります。
便利な一方で、セミセルフレジの導入によって起きてしまったトラブルもいくつか報告されています。
今回の記事では、セミセルフレジのよくあるトラブル事例とその対策法を紹介していくので、参考にしてください。
なぜセミセルフレジの普及率が高まっているのか?人気の理由
『2021年 スーパーマーケット年次統計調査』によると、セミセルフレジの設置率は、スーパーマーケットにおいて2019年11.4%、2020年15.8%、2021年23.5%と年々増加しています。スーパーマーケットに限らず医療機関やそのほかの飲食店・小売店においてもセミセルフレジ導入が急速に進んでいます。
また、株式会社MS&Consultingが行った調査『セルフレジ導入』をお客様はどう思っている?』によると、セルフレジを好印象に感じる人は全体の48%、たいして抵抗を感じる人はわずか6%にとどまり、好意的な印象を抱いている方が多いというデータがあります。人件費削減効果に限らず、そういった顧客満足度の向上につながるツールであることなども背景に、世間全体でセミセルフレジの導入が進んでいる状況です。
顧客満足度の向上以外に、セミセルフレジの導入が進んでいる背景は以下の通りです。
- 釣銭計算ミスがなくなり、レジ締め作業が楽になる
- すくない人数のレジスタッフでお客様をさばききれるようになり、人件費削減につながる
- お客さんの精算を待つ必要がなくなり、レジ業務を効率的にできる
- 会計時間が短縮されて、レジの待ち時間が減る
- 直接現金の受け渡しがないため感染予防対策になる
- キャッシュレス決済に連携可能な機器が多く、さまざまな支払方法に対応できる
このように多くのメリットがあることから、導入が進んでいるセミセルフレジですが、導入後にトラブルが発生してしまっている店舗も少なくありません。以下より、セミセルフレジにまつわるトラブル事例を紹介しながら、対策方法も併せて解説していきます。
セミセルフレジのよくあるトラブル事例5選と対策方法
ここでは、セミセルフレジのよくあるトラブル事例5選と対策方法を紹介していきます。
①操作に不慣れなお客様が一定数いる
セミセルフレジは新しいレジ機器なので、年配の方や子供は使い慣れていない方が多いです。
基本的に、ディスプレイに表示された金額を自動釣銭機に投入するだけですが、それがよくわからないという人もいます。年配の方や機械操作が苦手な方は、スタッフに操作方法を尋ねることも少なくありません。
操作方法を尋ねられたスタッフは一通り説明しますが、それでもできないという場合があります。その場合は、最初から最後まで一緒に操作をする必要があるため時間がかかってしまい、結果的に他の顧客を待たせてしまうかもしれません。
対策方法
セミセルフレジの操作方法に苦戦している顧客をみつけて、サポートをするためのスタッフを配置すると迅速に問題解決が可能です。顧客とのコミュニケーションが生まれるので、丁寧な接客を心掛けることで顧客満足度の向上も期待できます。
②万引きや払い忘れが発生する
セミセルフレジは便利な面がある一方で万引きや払い忘れのリスクもあり、実際に以下の事例のように、セミセルフレジを導入したスーパーでは未払いが発生しています。
埼玉県吉川市のスーパーマーケットの声 「会計に行かないで、そのまま出て行ってしまうと分かる術がない。未払いは1カ月に3~5件くらいはあると思います。気がつかないともうちょっと多い月は、5~10件ある」 |
未払いには、意図的な万引きとうっかり払い忘れてしまう場合があります。万引きと払い忘れの線引きは非常に難しいです。しかし、故意ではなく本当に払い忘れてしまっただけだとしても、刑事事件に発展する可能性があります。
堂々と万引きする人は少ないように思えますが、レジスタッフは商品バーコードをスキャンして顧客に精算してもらう段階になると、次の顧客の対応に入るので支払っている状況まで目が届きません。
そのため、スタッフの目を盗み万引きする人やうっかり払い忘れてしまう人が出てしまうのです。
対策方法
簡単な対策方法としては防犯カメラ設置を示すシールなど、万引きを抑止する施策を講じるようにしましょう。
サポートスタッフの教育を強化し、払い忘れや万引きに目を光らせる必要もあります。購入点数が多い人はセミセルフレジを使用せずに、その場で精算してもらうのもいいかもしれません。
ただし、現実問題として、セミセルフレジを導入して人員削減・コストカットをしたいにもかかわらず、万引きが発生するためにサポートスタッフを増員しなければなりません。人件費は削減されず、最悪の場合は以前よりも増えてしまう可能性があり、そうなると本末転倒です。
できる対策は講じる必要がありますが、万引きをゼロにするのは難しいです。万引きの損失よりも人件費削減効果の方が高い場合は、ある程度目をつぶるという判断も必要でしょう。
また、一部の店舗で店員にレジ担当者に自腹で払わせるという対応を講じる店舗がありますが、店員に責任を取らせるのは法律上難しく、パワハラや解雇になった場合は不当解雇にあたる場合もあるのでご注意ください。
③お札・硬貨詰まりなど、自動釣銭機側のエラー
セミセルフレジは、自動釣銭機とPOSレジを組み合わせた機器構成で、お札や硬貨の処理は自動釣銭機が行います。
以下の事例のように、自動釣銭機にお札が詰まったり、硬貨の大量投入によって機械が停止したりするのはよくあることです。
お札や硬貨が詰まると復旧まで時間がかかる場合があり、レジ業務が効率化されるどころか逆に多くの時間を割くことになってしまいます。
対策方法
エラー発生時に備えて修復方法をマニュアルとしてサポートスタッフに教えておくことが大切です。
特に自動釣銭機のエラーを解決する際は、基本的に自動釣銭機を開き内部から操作して解決する必要があります。その際、セキュリティキーが必要になるのですが、鍵を誰が持っているかスタッフが把握していないとエラー対処に思わぬ時間がとられるので、しっかりと把握しておきましょう。
以下は、自動釣銭機の代表的なトラブル(エラー)と対処法です。
自動釣銭機に紙幣や硬貨が詰まる・異物が混入する | 自動釣銭機を開き内部に詰まっている紙幣・硬貨を取り除く |
自動釣銭機にお札が入らない | お札が入らない原因と対処法は主に下記の2つ ・自動釣銭機の現金が満杯 ┗対処法:現金出金の操作をする ・お札が汚損金(破れていたり、汚れていたりする) ┗対処法:詰まりの原因にもなるのでお客様に違うお札を使っていただく |
自動釣銭機とPOSレジがうまく接続しない | 基本的にネットワークエラーが原因なので以下の対処を行う ・POSレジ端末やPOSレジアプリ、自動釣銭機の再起動を行う ・POSレジと自動釣銭機を接続するケーブル類の接触を確認する ・ローカルネットワークの設定が正しいかチェックする |
また、根本的に自動釣銭機のエラーを少なくするには、導入段階で高性能な自動釣銭機を選ぶようにしましょう。自動釣銭機によって、お札や硬貨の処理能力には差があります。ある程度の性能がある製品を選ぶといいです。
導入する際は、お金の処理速度をチェックすると、硬貨・紙幣つまりが起きづらい機種を選べます。
エラー発生時に、エラー原因を自動釣銭機のディスプレイに表示してくれるタイプの製品もあるので、迅速な解決を望むのであればそういった製品を選んだほうがいいでしょう。
また、お金が詰まる原因は基本的に大量投入や折れたお札などを投入するケースなので、お札や硬貨の大量投入や折れたお札をの仕様を防止する貼り紙をするのも効果的です。
④別のお客さんの会計を支払ってしまう
セミセルフレジの導線によっては、別の顧客の会計を払ってしまう可能性があります。そうなると、かなり長時間レジが止まってしまうので、気を付けなければなりません。
分離型のセミセルフレジの場合は、レジ本体と精算を行う精算機が離れたところに設置されている場合があります。
その場合、レジスタッフがしっかりと指示をしなければ、別の顧客の商品情報が登録された自動釣銭機で、顧客が精算を行ってしまうかもしれません。
対策方法
これは完全に顧客次第なので、防ぐのが難しいトラブルではあります。スタッフ側で顧客に精算機の場所をしっかり伝える、お客さんの動向をチェックするなど、教育強化を行うしかないですが極力対策をとるようにしましょう。
⑤お客さん同士のトラブルの火種となる
前の顧客の操作が遅く、後ろの顧客が怒ってしまうなどで、トラブルの火種となるケースもあります。
実際、前の人が精算処理に時間がかかりすぎているという理由で、殴り合いにまで発展したケースがあります。
対策方法
やはりこの場合も、サポートスタッフの教育強化が唯一有効な対策方法です。 しかし、あまり力を入れすぎても、結果的にサポートスタッフの仕事量が増えていくだけであり、根本的な問題の解決にはつながりません。
顧客自身が、セミセルフレジの操作に慣れてくれば、ここまで解説してきたようなトラブルも少なくなるでしょう。
セミセルフレジに対するお客様からの評判は?嫌いな人が多い?
セミセルフレジに対するお客様からの評判はどうなのか?嫌いな人が多いのか調べてみました。
「tenpoketnews」が行った評判調査によると、セミセルフレジがあるスーパーマーケットに対する印象として好印象を抱いた人が41.1%、特になんとも思わないと答えた人が52.5%、抵抗があると答えた人が6.3%という結果になりました。
セミセルフレジのあるスーパーに対する印象
一方でセルフレジ(フルセルフレジ)の場合は、好印象を抱いた人が45.8%、何とも思わないと答えた人が47.2%、抵抗を感じた人が6.9%とセミセルフレジに比べて少しだけ意見の割れ方が顕著となりました。
セルフレジのあるスーパーに対する印象
それでは、年代別の評判はどうでしょうか。年代別でセミセルフレジに抵抗があると答えた人は、20代で7%、30台で4%、40代で8%、50代で6%という結果となりました。年代による抵抗感にはそれほど差がないようですが、60代以上の回答数が少ないので一概にそうとは断言できない結果となっています。
年代別の”抵抗感がある”比率
セミセルフレジに対する全体の評判を見るとそこまで抵抗のある人は多くなく、セミセルフレジが嫌いな人は少ないという結果でした。ただし、クレーム等は基本的にごく一部のお客様からいただくものなのでトラブル対策はしっかり行っていきましょう。
トラブルを防ぐためにセミセルフレジ導入時に押さえておきたいポイント
ここでは、トラブルを防ぐために、セミセルフレジ導入時に押さえておきたいポイントを解説していきます。
スタッフへの丁寧な指導やマニュアルの作成
セミセルフレジの基本的なトラブルは、スタッフの対応次第で防げることが多いです。顧客対応や機器トラブル発生時の対応に関しては、事前にスタッフ間で共有しておきましょう。
硬貨の詰まりや操作方法の説明など、想定されるトラブルへの対応を事前に練習しておくと、実際にトラブルが起きた時にスムーズに対応できます。
起きる可能性が高いトラブルをリストアップして、マニュアル化しておくと共有しやすいです。
自動釣銭機が高性能な製品を選ぶ
前述の通り、機械トラブルを防ぐなら、自動釣銭機部分が高性能な製品を選ぶようにしましょう。
スマレジでセミセルフレジを導入する際に使えるグローリー300は、非常に高性能です。硬貨の詰まりなどが発生してエラーになった際は、エラーの解除方法が液晶画面にアニメーションでわかりやすく表示されます。画面に従って操作をしていくだけでスムーズに復旧可能です。
また、現金管理機モードで戻し入れ機能を利用すれば、エラー後の現金精査の手間を解消できます。
保守・サポート力のあるメーカーを選ぶ
セミセルフレジが故障やエラーが発生した際などの対応もメーカーによって差があります。メール・チャットのみのところや、現場まで駆けつけてくれるところもあるので、事前に確認しておきましょう。
レジ業務は止められないので、保守・サポート力のあるメーカーを選ぶのが重要です。
例えば、POS+(ポスタス)でセミセルフレジを導入すれば、設置のサポートから故障時の全国駆けつけサポートまで行っているので、安心して導入できます。
サポート力・自動釣銭機の性能に定評があるセミセルフレジメーカー3選
ここでは、サポート力・自動釣銭機に定評があるセミセルフレジメーカー3選を紹介していきます。
1. スマレジ|スマレジ株式会社
2. 東芝テック株式会社
3. POS+|ポスタス株式会社
スマレジ|スマレジ株式会社
■ おすすめポイント
- 高機能な自動釣銭機と連携
- エラーの解除方法が液晶画面に表示される
- サポートスタッフはスマレジ検定合格者のみ
■スマレジの特徴
サポートスタッフはスマレジ検定の合格者のみだから安心
スマレジは非常に高機能なPOSレジで、「グローリー380」という高機能な自動釣銭機と連携できます。顧客側の使いやすさを重視しており、コンパクトサイズなので省スペース化が可能です。
トラブル発生時は、エラーの解除方法が液晶画面に表示されるので、スムーズに復旧ができます。
サポート体制も充実しており、スマレジのサポートスタッフはスマレジ専門の研修を受け、定期的に実施されるスマレジ検定に合格したスタッフのみで構成されているので安心です。
■導入費用・ランニングコスト
・導入費用参考
iPad・自動釣銭機・iPadスタンド・バーコードリーダー込みで1,000,000円
・ランニングコスト
プレミアムプラスプラン:月額7,700円(自動釣銭機連携はプレミアムプラスプランでのみ可能)
機器サブスクプラン:月額26,400円(自動釣銭機1台につき)
※サブスク導入サポート費用176,000円が別途発生
■製品情報
総合評価 | 5.0 |
おすすめの業種 | 全業種 |
サイズ | 硬貨つり銭機RT-380:260(W)×540(D)×130(H)mm ※突起部を除く紙幣つり銭機RAD-380:140(W)×540(D)×260(H)mm ※突起部を除くふたつを組み合わせた時の横幅横置き・幅400mm縦置き・幅260mm |
処理速度 | 要問合せ |
保守・サポート対応 | 365日受付コールセンター、メールサポート |
東芝テックセミセルフレジ
■ おすすめポイント
- 登録機と会計機が分かれている分離型
- 硬貨収納枚数を超えてもオーバーフロー袋に自動出金され
- 会計機で利用者の操作状況を確認可能
■東芝テック株式会社(AS‐910・SS-920)の特徴
硬貨収納枚数を超えても安心 各種キャッシュレス決済対応
ターミナルPOSレジ世界シェアNO.1の東芝テック株式会社が提供しているセミセルフレジは、登録機と会計機が分かれており、登録機でレジスタッフが商品バーコードをスキャンしてから、会計機で顧客が会計を行う仕様です。硬貨収納枚数を超えてもオーバーフロー袋に自動出金されるため、回収の手間を省けます。
オプションで、会計機で利用者の操作状況や釣銭機有高がリアルタイムで確認できる、コンビネーションディスプレイを搭載可能です。
■導入費用・ランニングコスト
・導入費用参考
100万円~150万円
・ランニングコスト
無し(※別途必要に応じて保守サポート費用あり)
■製品情報
総合評価 | |
おすすめの業種 | 小売店(スーパーなど) |
サイズ | SS-920K セミセルフレジ用会計機690(W)×690(D)×2,032(H)mm(パトランプ含む)〈 ※本体 360(W)mm〉 AS-910 セミセルフ専用登録機637.8(W)× 211.9(D)×744(H)※1 /1,424(H)※2mm( 最大寸法※3)※1 サッカー台上面からの高さ。※2 東芝テック標準サッカー台の高さ680mm含む。※3 機器構成・表示機の高さにより異なる。幅は客面表示器からキーボードまでの長さ。 |
処理速度 | 要問合せ |
保守・サポート対応 | ホームページから全国各地のサービス拠点を検索可能 |
POS+|ポスタス株式会社
■ おすすめポイント
- 小売店や飲食店などに特化した機能を搭載
- 連携できる自動釣銭機はグローリー社の300シリーズと380シリーズ
- さまざまな外部サービスと連携できる
■POS+の特徴
グローリー製の高性能な自動釣銭機×高機能なPOSレジで全体的な業務効率向上
POS+は、小売店や飲食店などに特化した機能が搭載されており、多くの業種で導入されています。連携できる自動釣銭機はグローリー社の300シリーズと380シリーズです。いずれも非常に高性能なので、レジ業務の効率化が期待できます。
POS+のPOSレジと連携させることで、レジ業務以外にも全体的な事務作業の効率が向上するでしょう。 また、さまざまな外部サービスと連携できるので柔軟に拡張可能です。
■導入費用・ランニングコスト
・導入費用参考
要問合せ
・ランニングコスト
- 小売店:月額12,000円~
- 飲食店:月額12,000円~
- 飲食店(小規模店舗)月額6,000円~
- 美容・サロン:月額12,000円~
■製品情報
総合評価 | |
おすすめの業種 | 小売店、飲食店、美容・サロン |
サイズ | 【グローリー380】硬貨つり銭機RT-380:260(W)×540(D)×130(H)mm ※突起部を除く紙幣つり銭機RAD-380:140(W)×540(D)×260(H)mm ※突起部を除くふたつを組み合わせた時の横幅横置き・幅400mm縦置き・幅260mm【グローリー300シリーズ】硬貨つり銭機 RT-300260(W)×540(D)×130(H)mm ※突起部を除く紙幣つり銭機 RAD-300220(W)×540(D)×130(H)mm ※突起部を除く |
処理速度 | 要問合せ |
保守・サポート対応 | 導入店舗専用コールセンター(10:00~22:00)全国かけつけサポート、初期設定・設置など導入は全てお任せ |
その他のおすすめセミセルフレジの機能や特徴を知りたい方は以下の記事にて詳しく紹介していますので、気になる方はチェックしてみてください。
まとめ
セミセルフレジは非常に便利な面がある一方で、少なからずトラブルも発生します。サポートスタッフの教育に力を入れることで、トラブルを事前に防ぐことが可能です。
セミセルフレジの導入を検討していたり、セミセルフレジ導入後に数件のトラブルが発生している方は、今回の記事の内容を参考に対策をとってみてください。