2021年4月1日から義務化された、「総額表示」。
これは、消費者に対して値札やチラシ、メニューなどで価格表示をする際に、消費税額を含めた価格を表示することです。
すでに値札やチラシなどへの対応は済ませている事業者も多いかと思います。
しかし、POSレジへの対応で迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、POSレジについては総額表示の対象外なので、すぐに対応する必要はありません。
ただし、対応しないことで発生するトラブルには注意が必要です。
本記事では、消費税の総額表示の義務化について、レジで必要な対応やポイント・注意点についてわかりやすく解説していきます。
消費税の総額表示義務化について理解しておくことで、お客様とのトラブルを避けられるようになるでしょう。
そもそも総額表示の義務化って何?
「総額表示の義務化」は、商品やサービスを販売する事業者が値札やメニューなどで価格表示する場合に、消費税を含めた価格を表示することを義務付けるものです。
つまり、消費者に対して価格表示する場合は、「税込み価格」で表示するということです。
総額表示の義務化の対象となる事業者は、一般の消費者に対して商品・サービスの販売を行う消費税課税事業者となります。例えば、飲食店や小売店が含まれます。
したがって、事業者同士で取引を行う場合は対象外です。
総額表示を行う媒体には、
- チラシ
- 飲食店のメニュー
- 折り込みチラシ
- プライスカード(値札)
- ダイレクトメール
- インターネットの販売ページ
など、不特定多数の消費者に向けた価格表示すべてが対象になります。法人における見積書や請求書などは、総額表示の必要がありません。
総額表示が義務化された背景
総額表示が義務化された背景には、消費者が価格を比較する際に誤って認識してしまう課題があったからです。
1989年(平成元年)に3%の消費税がはじめて導入され、1997年に5%に引き上げられました。引き上げられた際に、各事業者で販売価格の表示が異なり、消費者が代金を支払う金額について認識を誤ってしまうトラブルがあったのです。
例えば、Aのお店では税込価格が表示されていて、Bのお店では税抜価格が表示されている、これでは価格の比較がしづらいといえます。
このような課題を解決するために、消費者が値札などを見れば「消費税を含んだ支払い金額」が一目でわかるように総額表示の義務化が始まったのです。
総額義務表示の特例は終了!2021年3月31日から完全義務化している
総額表示の義務化は2004年4月から実施されています。
しかし、義務化されて以降も総額表示に対応している店舗と、対応していない店舗が混在していました。
その理由は、2021年3月31日までは消費税の総額表示に対応していなくても問題ないという、「総額表示義務の特例」が定められていたからです。
現在は総額表示義務の特例は終了しており、完全義務化となっているので注意しましょう。
総額表示の表記ルールについて
ここでは、総額表示の表記ルールについて、具体的な例と一緒にみていきましょう。
総額表示をしなければいけない対象媒体は?
総額表示の対象媒体は、不特定多数の消費者に向けた価格表示すべてです。ただし、口頭で価格表示する場合は、対象外となります。
消費税の総額表示をしなければいけない媒体には、以下のものが挙げられます。
- プライスカード
- カタログ
- 飲食店のメニュー
- インターネットの販売ページ
- 商品パッケージに印字・貼付された価格表示
- 折り込みチラシ
- ダイレクトメール
- ポスターや看板の価格表示
- 新聞や雑誌、テレビなどの媒体を使用する広告
上記はあくまで不特定多数の消費者に向けた価格表示であり、事業者間での取引は対象外となります。見積書や納品者、請求書などは対象外なので覚えておきましょう。
総額表示の表記例
総額表示はどのように表記すればよいのでしょうか。
ここでは、税抜価格10,000円、消費税率10%の商品を例に解説します。
正しい表記例
- 11,000円
- 11,000円(税込)
- 11,000円(税抜価格10,000円)
- 11,000円(うち消費税額等1,000円)
- 11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
- 10,000円(税込11,000円)
間違った表記例
- 10,000円(税別)
- 10,000円(税抜)
- 10,000円(消費税1,000円)
- 10,000円 ※表示価格は税抜です
2021年4月以降は、上記に示した正しい表記例で対応しなければなりません。
「10,000円(税込11,000円)」のような表記でも問題ありませんが、根底にあるのは「支払総額を一目でわかるようにし、消費者の利便性を向上させる」ことにあります。
そのため、消費者にわかりやすい表示方法を検討していきましょう。
1円未満の端数が出たらどうする?
消費税の総額表示をしたことで、税込価格に1円未満の端数が発生する場合があります。
その場合は、以下のいずれかの方法で処理できます。
- 切り捨て
- 切り上げ
- 四捨五入
お客様の利便性の向上に努めるためにも、上記のような方法で端数処理をしてわかりやすい価格を提示しましょう。
消費税総額表示義務化でレジで必要な対応は?
消費税の総額表示義務化にしたがって値札やメニューなどへの対応は済んでいるでしょう。
しかし、レジではどのような対応が求められるのでしょうか。
ここでは、消費税の総額表示義務化によるレジの対応や、注意点などについて解説します。
POSレジに変更しなければいけないのか
結論から申し上げると、現在レジスターを利用しているお店はPOSレジに変更する必要はありません。
また、POSレジを利用している方も消費税の総額表示に対応するレジシステムの変更は必要はありません。
POSレジから出力されるレシート金額の表示に関しては、店舗とお客様との取引結果が記載されるものなので、
総額表示の対象外となるからです。
ただし、後述するレシート金額と表示価格にズレが生じると、金額の相違からお客様とのトラブルにつながる可能性があります。
そのため、総額表示に対応したPOSレジの変更が望ましいです。
レシート金額と表示価格がズレないように注意
前述したように、POSレジから出力されるレシートは総額表示の対象外となりますが、
レシート金額と表示価格にズレが発生しないように注意が必要です。
例として、184.8円(税抜価格168円)の商品を2つ購入したとします。
総額表示に対応した場合のお客様の支払い金額は368円になります。
しかし、POSレジを総額表示に対応した変更せずに運用をすると、以下のような誤差が発生してしまうのです。
税込 | 税抜(積み上げ計算方式) | |
商品A | 184円 | 168円 |
商品B | 184円 | 168円 |
小計 | 336円 | |
消費税 | 33.6円 | |
合計 | 368円 | 369円←1円の誤差が発生 |
表の合計額を見ると、1円の誤差が発生しています。POSレジを総額表示の価格に変更しなければ、お客様とのトラブルも発生しやすくなるでしょう。
万が一、積み上げ計算方式でレジ運用する場合は、お客様に「消費税の計算上、レジでの支払い時に合計金額と異なる場合があります」などの案内が必要です。
特に飲食店は誤差が生じやすいので注意!
特に飲食店で、テイクアウト対応を行なっている場合は、誤差が生じやすいので注意しましょう。
テイクアウトする場合は、消費税率8%の「軽減税率」が適用されます。
そのため、税抜価格で表示していると、価格の誤差が生じやすくなるのです。
他にも、値引き・割引をする場合も誤差が発生しやすくなります。
また、セルフオーダーシステムは、事前に価格が表示されているため、総額表示対応が必須です。
飲食店はレシート金額と表示価格に誤差が生じやすいので、早めの対応が求められるでしょう。
インボイス制度に備えてPOSレジを導入するのがおすすめ
2023年10月1日からインボイス制度が始まります。インボイス制度とは、「適格請求書等保存方式」のことです。
適格請求書は、所定の記載要件を満たしている請求書のことをいいます。そして、企業が仕入税額控除を受ける際に使う請求書が、この適格請求書であることが義務付けられるようになるのです。
インボイス制度が開始してからは、請求書を発行する企業側が適格請求書(インボイス)を発行しなければ、請求書を受け取る企業は仕入税額控除を受けられなくなります。
飲食店や小売店がインボイス対応していない場合、利用客が経費精算時に仕入税額控除を受けられなくなってしまいます。
そのため、飲食店や小売店などにおいても、発行するレシートを適格請求書に適用した形式にする必要があるのです。
そこでおすすめなのがインボイス対応の「POSレジ」です。適格請求書の作成を簡単に行えます。
軽減税率対応にもPOSレジが楽
前述したインボイス対応だけでなく、「軽減税率」の対応にもPOSレジが便利です。
軽減税率とは、消費税増税によって10%になった商品の一部を、8%の据え置きにする制度です。
レジの税率設定の変更は手間がかかるだけでなく、慣れないスタッフだと設定時にミスをする可能性もあります。
一方、軽減税率に対応したPOSレジでは、
- 税率設定変更がPOS画面上から簡単に行える
- 会計時にスタッフが税率選択できるポップアップを表示できる
- 部門数の上限が多いため、登録可能な部門数の制限を気にしなくてよい
などのメリットが期待できます。機械操作が苦手な方や、税率設定がわからない方でも簡単に設定が行えるでしょう。
低価格化が進みレジスターとそん色ない価格で導入可能なPOSレジも
「インボイス制度に対応していたり、軽減税率に対応していたり、POSレジって高そう…」
というイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思います。
実は現在POSレジは大幅な低価格化が進み、従来のレジスターと変わらない価格での導入が可能です。
たしかにスーパーなどで見かけるターミナルPOSレジは、高性能な分1台100万円以上の導入価格がかかります。
しかし、タブレット型POSレジの登場により、5〜10万円程度でPOSレジを導入できるようになりました。
タブレット型POSレジは、iPadなどのタブレット端末にPOSレジアプリをインストールして利用するタイプの製品です。
POSレジの費用を抑えたい事業者は、プランが細かく分かれている製品がおすすめです。
導入当初は0円のプランからスタートし、欲しい機能があれば自由に追加できる製品を選ぶとよいでしょう。
クラウド型POSレジを選べば今後の制度改正時の入れ替えがなくなる
クラウド型POSレジを導入すれば、インボイス制度や軽減税率など、今後の制度改正時の入れ替えが必要なくなります。
クラウド型の場合、メインエンジンはクラウド上にあります。そのため、アップデートが繰り返され、常に最新の状態が保たれるのです。
制度改正時には自動でアップデートされるので、レジを買い替える必要がない点がPOSレジを導入するメリットといえるでしょう。
おすすめのクラウド型POSレジ3選
ここからは、前述したインボイス制度や軽減税率の対応も踏まえて、おすすめのPOSレジを3製品紹介します。
- スマレジ
- USENレジ
- POS+(ポスタス)
スマレジ
導入価格例 | 112,780円~ | ハードウェア | タブレット |
月額料金 | 0円~15,400円 | 対象規模 | 全ての規模に対応 |
■スマレジのおすすめポイント
- 機能充実度は、全タブレットPOSレジで圧倒的No.1
- スマレジ・アプリマーケットでPOSレジを自由にカスタマイズできる
- 月額利用料0円で始められる
スマレジは、アクティブ店舗数38,000を超える大人気のタブレット型POSレジです。
多くの店舗で導入されている理由は、他者を圧倒する機能の充実度です。
他にも、低価格、サポート品質の高さ、操作性の高さなど、非常にバランスの取れた製品といえます。
機能がこれだけ充実している理由に、「スマレジ・アプリマーケット」の存在があります。
100以上にわたるアプリを自由に追加できる独自のプラットフォームです。
必要な機能だけを自由に選んで追加できるため、無駄なコストが発生しない点がメリットといえるでしょう。
当サイトの選ぶおすすめPOSレジランキングでは見事1位に輝いています。
■スマレジの製品情報
導入価格例 | 112,780円~ |
月額利用料金 | ・スタンダード:0円※1店舗のみ ・プレミアム:5,500円/月※1店舗につき ・プレミアム プラス:8,800円/月※1店舗につき ・フードビジネス:12,100円/月※1店舗につき ・リテールビジネス:15,400円/月※1店舗につき |
サポート | メール(平日9:00~22:00)、365日対応のコールセンター(9:00~22:00) ※365日対応のコールセンターはプレミアムプラン以上の加入が必要 |
メーカー名 | 株式会社スマレジ |
USENレジ
導入価格例 | 180,000円~ | ハードウェア | タブレット |
月額料金 | 9,980円~ | 対象規模 | 全ての規模に対応 |
■USENレジのおすすめポイント
- 飲食店・美容室・小売店・整体院に特化したプランを用意
- 24時間365日対応の専用ヘルプデスクで安定した運用が可能
- USENの幅広いサービスを一括で導入できる
USENレジは、有料タブレットPOSレジシェアでNo.1を獲得した製品です。飲食店・美容室・小売店・整体院に特化した4つのPOSレジアプリを揃えており、それぞれ機能が充実しています。
USENはPOSレジだけでなく、さまざまなサービスを提供している企業です。店舗BGMや光回線、集客ツール、店内Wi-Fi、クラウド会計システムなど多岐にわたります。これらサービスをお得な料金で一括導入できるのは大きな魅力です。
サポート体制では、24時間365日対応の専用ヘルプデスクを設置しており、常に安定したサービスの提供を可能にしています。
■USENレジの製品情報
導入価格例 | 180,000円~ |
月額利用料金 | 9,980円~ |
サポート | メール、24時間365日電話サポート、駆けつけサポート |
メーカー名 | 株式会社USEN |
POS+(ポスタス)
導入価格例 | 個別見積り | ハードウェア | タブレット |
月額料金 | 6,000円~14,000円 | 対象規模 | 全ての規模に対応 |
■POS+(ポスタス)のおすすめポイント
- 飲食店、小売店、美容・サロンに特化したプランがあり機能充実
- 短周期による定期バージョンアップで法対応に合わせた運用が可能
- サポートの手厚さがトップクラス
ポスタスは、飲食店、小売店、美容・サロンに特化したプランが用意された高機能クラウドPOSレジです。月間の導入店舗数が1,000店舗を超えており、導入数が増えています。
機能面では、飲食店や美容・サロンに役立つ予約管理機能や、各種オーダーエントリーシステムが好評です。また、英語・中国語・ベトナム語・タイ語・韓国語など、他社と比べても多彩な言語に対応可能です。
ポスタスは年4回のバージョンアップを行い、お客様からの要望や軽減税率、免税電子化などの法対応に合わせてシステムをアップデートしています。店舗ごとの個別機能拡張にも対応しており、店舗独自のPOSレジにカスタマイズできるのも魅力です。
■POS+(ポスタス)の製品情報
導入価格例 | 個別見積り |
月額利用料金 | ・小売店:月額14,000円~ ・飲食店(小規模店舗):月額6,000円~ ・飲食店:月額14,000円~ ・美容・サロン:月額14,000円~ |
サポート | 初期設定、設置、365日電話サポート(10:00~22:00)、全国無制限の駆けつけサポート |
メーカー名 | ポスタス株式会社 |
POSレジでできる消費税等の設定イメージ
ここでは、POSレジでできる消費税などの設定イメージを解説していきます。
商品に適用する税率の設定イメージ
商品に適用する税率の設定は、たいていの場合POSレジの「商品設定画面」や「消費税設定画面」から行えます。「内税/外税」と、「標準税率・軽減税率・注文時に選択・非課税」の設定を商品ごとに切り替えて登録することが可能です。
以下では、設定イメージをステップ形式で解説します。
商品ごとの適切な適用税率はどれ?
商品ごとの適切な適用税率は以下の表を参考にしてください。
指定できる税率 | 内容の説明 | 対象の商品例 |
標準税率 | 税率10%で消費税が適用されます。 | ・酒類・外食・飲食料品以外の商品 |
軽減税率 | 税率8%で消費税が適用されます。 | ・一般飲食料品・週2回以上発行される新聞 |
注文時に選択 | イートインやテイクアウト、店内提供などの提供方法を選択して商品に指定できます。選択した消費税が適用されます。 | ・酒類を除く飲食料品(複数の販売方法で提供されているもの) |
非課税 | 非課税商品に指定します。 | 商品券など |
内税・外税の設定イメージ
内税・外税は、商品登録時に最初に設定される税をどちらかで設定できます。そもそも内税とは、消費税を含む価格のことで、外税は消費税を含まない価格のことです。
設定イメージは、「基本設定」の画面から、「内税・外税」設定の「内税」または「外税」を選択します。
選択した内容で保存ボタンを押すと、設定が完了します。
補足:内税と外税の違いとは?
内税と外税の大きな違いは、商品やサービスに「消費税が含まれているか、いないか」です。
例えば、商品価格10,000円で消費税1,000円の場合、内税では「11,000円(税込)」などのように表記します。
外税では、「10,000円(税抜)」のように消費税が価格に含まれていない表示の仕方です。
2021年4月1日以降からは、外税表記が認められず、内税による総額表示に対応しなければなりません。
まとめ
本記事では、2021年4月から始まった消費税の総額表示義務化について解説してきました。
商品やサービスを販売する事業者は、消費者に対して値札やメニューなどで価格表示をする場合は、消費税を含めた価格を提示しなければなりません。
総額表示でPOSレジの対応は必須ではないとはいえ、表示価格とレシート金額の誤差が発生するなど、お客様とのトラブルも考えられます。
POSレジを運用する際は、総額表示に対応していた方がお客様の利便性向上にとってもよいでしょう。