- POSレジの耐用年数(減価償却期間)
- POSレジの勘定科目
- 耐用年数や減価償却に関する基礎知識
- 購入、レンタル、リース、それぞれの場合の耐用年数の違い
- POSレジ導入時の節税テクニック
- 少額減価可能な低コストPOSレジ
POSレジの導入に伴い、知っておかなくてはならないのが「耐用年数」です。耐用年数はPOSレジを使用できる期間というわけではありません。経費の計上に必要なもので節税に大きく影響するところなので、必ず確認しておくようにしましょう。
耐用年数は国税庁により、機器ごとに定められています。そこで当記事では、POSレジの耐用年数と節税する方法について解説していきます。また、耐用年数や減価償却の言葉の意味やポイントなど基礎的な内容も解説しています。レンタルやリースの場合の経費計上方法も紹介していきますので、是非最後までお読みください。
本記事では、POSレジの耐用年数について解説しています。その前にまずはPOSレジとは何なのかについておさらいしたい方は以下の記事で詳しく解説していますので、チェックしてみてください。
【まずは結論】POSレジとその周辺機器の耐用年数・勘定科目は?
まずは、結論だけ知りたいという方のためにかいつまんで説明します。基礎的な情報を知りたい方は、次章から詳しく解説していきますので参考にしてください。
POSレジの法定耐用年数は国税庁により「5年」と定められています。
スマレジやAirレジといったPOSレジにおいても同じく5年が耐用年数ですが、例外はパソコン型POSレジです。普通のパソコンに周辺機器を繋げてPOSレジとして使用するタイプのもので、耐用年数は4年となります。
その他例外となるケースとして、ガソリンスタンドで使われるPOSシステムの耐用年数は8年と長くなるため、注意が必要です。
購入、レンタル、リース、導入方法別の耐用年数は?
耐用年数は施設が保有している「資産」に対して定められている期間です。つまり、レンタルの場合、POSレジの所有権はレンタル会社にあるため利用者が所有する資産とはみなされません。そのため、レンタルの場合は耐用年数について気にする必要はないでしょう。
一方、リースの場合は購入に準じた扱いとなるため、利用者が減価償却の処理をしなくてはなりません。所有権が利用者に移る「所有権移転」の契約であれば、固定資産と同じく国税庁が定めた耐用年数に応じて減価償却を行います。
ただし、所有権が常にリース会社にある「所有権移転外」契約であれば、リース契約をしている期間が耐用年数になります。リース契約の内容によって異なるため、契約内容をしっかり確認しておく必要があるでしょう。
- 購入:例外を除き5年
- レンタル:耐用年数は特に関係がない
- リース(所有権移転契約):固定資産と同じく国税庁が定めた耐用年数に応じて減価償却(例外を除き5年)
- リース(所有権移転外契約):リース契約をしている期間が耐用年数になる
周辺機器の耐用年数は?
POSレジの周辺機器にも耐用年数が定められています。周辺機器の耐用年数は基本的に5年となります。例外を含めそれぞれの耐用年数は、下記の表を参考にしてください。
タブレット端末 | 5年 |
レシートプリンター | 5年 |
キャッシュドロアー | 5年 |
バーコードリーダー | 5年 |
パソコン(本体サーバーとして活用するもの) | 5年 |
パソコン(サーバーでないPOSに接続されたもの) | 4年 |
自動釣銭機 | 5年 |
自動精算機 | 5年 |
ガソリンスタンドPOSレジ周辺機器 | 8年 |
ほとんどの周辺機器が耐用年数は5年となります。ただし、先述したようにガソリンスタンドで使用されるPOSだけは例外となり、耐用年数は8年ですので注意しましょう。
POSレジの勘定科目は?
POSレジの勘定科目を「最低限の仕訳ができればよい」という方と、「細かく仕訳したい」方向けに分けて、それぞれ解説していきます。
レジの金額が10万円未満なら「消耗品費」、レジの金額が10万円以上なら「工具器具備品」として計上可能です。
レジの金額が10万円未満 | 消耗品費 |
レジの金額が10万円以上 | 工具器具備品 |
細かく仕訳をしたい方はPOSレジの種類で分けましょう。具体的には以下の通りです。
POSレジの種類 | 勘定科目 | 製品例 |
---|---|---|
ターミナルPOS、パソコン・タブレットがレジと一体化したPOS | 金銭登録機 | BCPOS、東芝テック製品、カシオ計算機製品など |
パソコンにレジをインストールするタイプのPOS、タブレットにアプリをインストールするタイプのPOS | パソコン・タブレット:電子計算機 POSシステム・POSアプリ:ソフトウェア | Airレジ、スマレジ、ユビレジ、Squareなど |
耐用年数や減価償却、勘定科目の意味をわかりやすく解説
耐用年数について調べていると、難しい言葉がたくさん登場します。普段はあまり聞かない言葉も多いので、意味が分からないという方も多いことでしょう。本章では各用語の意味をわかりやすく解説していきます。すでに理解している方はスキップしていただいて問題ございません。
主に下記の言葉の意味は、知っておくと便利です。
- 法定耐用年数
- 固定資産
- 減価償却
ここからは、それぞれの言葉の意味を分かりやすく解説していきますので参考にしてください。
法定耐用年数とは
法定耐用年数とは国が定めた期間のことです。資産の種類に応じて定められており、その期間は「価値のある資産」として経費計上できるのです。耐用年数は「耐久年数」とは異なります。
たとえば、POSレジの法定耐用年数は5年ですが、5年の間使用できると保証されているわけではありません。使い方によっては3年で壊れてしまうものもありますし、反対に5年以上使い続けることができるケースもあります。
国が「このくらいの間は資産価値を維持できる」と判断した期間といえるでしょう。法定耐用年数が定められていることにより、消費者が平等に機器の減価償却をすることができるのです。
固定資産とは
次に「固定資産」について見ていきましょう。POSレジを購入した場合、POSレジは利用者の「固定資産」とみなされます。固定資産とは利用者が長期にわたって保有するものや、1年以上にわたり使用される資産のことです。
資産には固定資産の他に「流動資産」や「繰延資産」があります。流動資産は現金や製品といった現金化できる資産を指すのに対し、固定資産は土地や建物、機械装置やソフトウェアなどすぐには現金化できないものを指します。
繰延資産は固定資産と同じように、複数年にわたって費用の償却が可能です。しかし、創立費や開業費、開発費など、売却や譲渡によって財産価値を生み出すことができないものが「繰延資産」として扱われます。
POSレジは利用者が長期にわたって使用する「固定資産」になるので、減価償却の処理が必要になります。
減価償却とは
最後に「減価償却」についてみていきましょう。POSレジなどの固定資産は長期にわたり使用するものですが、年が経つうちに劣化が進み価値も下がってしまいます。この考え方のもとで行う経費計上の方法を「減価償却」と呼びます。
固定資産にはそれぞれに「耐用年数」が定められており、その耐用年数の間に少しずつ経費を計上することが可能です。たとえば、POSレジの耐用年数は5年なので、一度に経費計上するのではなく5年間に分けて少しずつ経費として計上していきます。
分割して経費計上することで、実際の損益に見合った収支管理が可能になるのです。なお、5年経過後に同じPOSレジを使用していたとしても、それ以降は減価償却を行うことができません。
勘定科目とは
勘定科目とは、会社を出入りする各種現金の分類項目の総称です。会社の取引では、経費や収益、資本増減、負債など現金の出入りが複数発生しますがそれらを仕分けるための見出しのようなものです。
勘定科目をつかうことにより、誰が帳簿を記載しても統一した内容となり、あとから見返した際に、どのように現金が出ていき、どのように入ってきたのかがわかりやすくなります。社員だけでなく社外の税理士なども帳簿を見るので、正しく作業を行うためにも勘定科目も分類することは必須になります。
前述の通り、POSレジの勘定科目はレジの金額が10万円未満の場合は消耗品費、10万円以上の場合は工具器具備品と仕訳することができます。さらに細かく仕訳をすることもできるので、詳しくは記事前半をご参照ください。
参考:「勘定科目とは?仕訳の分類について徹底解説!」三井住友カード
POSレジの3種類の導入方法と導入方法別の減価償却方法を解説
POSレジの導入には購入以外にもレンタルやリースといった方法があります。それぞれの導入方法によって、減価償却方法が異なりますので注意しましょう。ここでは、導入方法ごとの減価償却のやり方を簡単に解説していきます。
POSレジの購入
POSレジを購入すれば、それは利用者の固定資産となります。そのため、減価償却や固定資産税などを行う必要があるのです。POSレジの購入には多額な費用がかかります。
メーカーによって費用は異なりますが、初期費用はパソコン型POSレジで0円~40万円、ターミナル型POSレジは50万円~150万円、タブレット型POSレジは4万円~40万円ほどかかります。POSレジの購入は後述のレンタルやリースに比べ初期費用が多くなりますが、長期で見た際の支払い総額は少なるなるというメリットがあります。
月額は無料~30,000円と比較的安価ですが、別途年間1~5万円程度の保守費用がかかることもあるので注意が必要です。このように、POSレジの購入には、初期費用に多くのお金がかかります。だからこそ正しく減価償却を行って、節税対策をしていきましょう。
POSレジを購入した場合の減価償却
POSレジを購入した場合は、国税庁によって定められた法定耐用年数に応じて減価償却を行います。先述したように、POSレジは「事務機器・通信機器」にあたるため、法定耐用年数は5年です。
5年間で少しずつ経費計上していくようにしましょう。たとえば100万円のPOSレジであれば、毎年20万円ずつ計上していく計算になります。
なお、減価償却の対象となるのは、10万円以上のPOSレジだけです。10万円未満のものは、消耗品費として全額を計上することができます。さらに、パソコンやタブレット端末のPOSレジの場合は、法定耐用年数が4年間となるので注意しましょう。
POSレジのレンタル
次の導入方法は「レンタル」です。レンタルは1週間~1ヶ月程度など基本的に短期間、レンタル会社から借りる方法を指します。購入やリースに比べると割高になるため、短期間のイベントなどで使用されるケースがほとんどです。
長期レンタルとして、毎月継続してレンタルする場合は「サブスクリプション」と呼ばれます。サブスクは月額料金や初期導入費用を安く抑えることができるので、予算が厳しい店舗にもおすすめの方法です。ただし、レンタルできる機器は限られているため、使いたい機能が付いているかどうかを事前に確認しておきましょう。
POSレジをレンタルした場合の減価償却
POSレジをレンタルした場合、減価償却の処理は不要です。先述したように、減価償却は利用者の「固定資産」に対して必要な経理手続きになります。レンタルの場合、所有権はレンタル会社にあるため利用者の固定資産とはみなされません。
レンタル料金を経費として計上することは可能ですが、減価償却の対象とはなりませんので注意しましょう。また、固定資産税や損害保険の対象からも外れます。レンタル料金以外の費用を抑えられるので、経費計算もしやすいでしょう。
POSレジのリース
最後はPOSレジをリースする方法です。リース期間は5年~7年と、レンタルに比べて長期にわたるのが一般的です。初期費用を抑えられるので、手軽に導入できるのがメリットといえるでしょう。
とはいえ、購入に比べると、リース料の総額の方が割高になります。さらに、途中解約もできませんので、リース期間中は借りた機器を使用し続ける必要があるでしょう。また、事前の審査が必要になり、すぐに導入できるとは限りません。導入までの納期は、事前にメーカーに確認しておきましょう。
POSレジをリースした場合の減価償却
リースの場合は、購入に準じた扱いとなるため減価償却の処理が必要です。リース契約中の所有権はリース会社にありますが、利用者が機器を長期にわたって利用することになるからです。
ただし、購入時とは耐用年数が異なるので注意しましょう。所有権が利用者に移転する契約内容であれば、耐用年数は購入時と変わらず「5年」となります。しかしながら、所有権移転外リース契約であれば、契約年数が耐用年数として扱われます。たとえば、契約期間が7年であれば、定額法で7年間減価償却を行うことになるので注意しましょう。
POSレジ導入の節税テクニック
POSレジ導入の節税テクニックとして、「①少額減価償却資産」と「②利益好調時の減価償却額の増額」について解説していきます。
①少額減価償却資産の活用
少額減価償却資産とは、青色申告をしている中小企業に限り、30万円未満の少額資産であれば年度内に一括経費計上可能という制度です。減価償却する必要がなくなりまとめて、経費として精算できるので税金の支払い額を抑えることにつながります。
タブレットPOSレジなど安価な製品であれば、周辺機器などまとめて購入しても30万円未満で導入できるケースが多いので積極的に活用していきましょう。
少額減価償却できる可能性の高い低価格POSレジについては以下の記事で紹介しています。気になる方はチェックしてみてください。
②利益が好調な時に購入する
利益が好調であるほど、払うべき税金は増加します。そういったときを狙って将来的な投資として、POSレジの入れ替えを行うことで税金の支払い額を抑えることが可能です。なおかつPOSレジによる業務効率化も可能なので、こちらも活用できるシチュエーションでは積極的に狙っていきましょう。
POSレジ導入費用を抑えるなら補助金も活用
POSレジの導入には多額な費用がかかりますが、下記のような補助金を活用できる可能性があります。
- IT導入補助金≪デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)>
- 業務改善助成金
- ものづくり補助金<一般型・グローバル展開型>
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>
ここからは、POSレジ導入に活用できる可能性のある補助金について詳しく解説していきます。
IT導入補助金≪デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)>
POSレジの導入において、最も使われるケースが多いのが「IT導入補助金≪デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)>」です。IT導入補助金は中小企業や小規模事業者の業務効率化をサポートするための補助金制度になります。
購入費用だけでなく、クラウド利用料を最大2年分補助してくれる可能性もあるので是非活用していきましょう。IT導入補助金を受けるためには、ホームページから申請に必要な方法を提出します。ただし、申請後には審査があり、審査に通らない場合は給付を受けることができませんので注意しましょう。
IT導入補助金の補助率・補助上限額
IT導入補助金の補助率は以下の通りです。
導入費5万円~50万円以下 | 補助率3/4以内 |
導入費50万円超~350万円以下 | 補助率2/3以内 |
PC・タブレット、周辺機器のみに導入費が発生している場合 (無料レジアプリなど) | 補助率1/2以内 |
必ず上記の補助率通りもらえるというわけではなく、補助上限額が設定されています。
POSレジの場合以下の通りとなります。
ソフトウェア購入費 (パソコンレジソフトやPOSレジアプリのこと) | 5万円~350万円 |
PC・タブレット購入費 (PCやタブレットにレジアプリをインストールするタイプのPOSレジ) | ~10万円 |
レジスター端末・券売機等購入費 (POSシステムが入ったレジ端末を導入する場合) | ~20万円 |
出典:「IT導入補助金2023」 一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
業務改善助成金
次の補助金制度は「業務改善助成金」です。業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援するための補助金制度になります。POSレジなど生産性向上のための設備投資を行い、それにより事業所内の最低賃金を引き上げた場合に給付対象となります。
過去には、POSレジシステム導入により、在庫管理が短縮できたことで給付を受けられたという事例もあります。助成額には上限があり、POSレジの費用全額が保証されるわけではありませんので注意しましょう。IT導入補助金と同じく、審査が必要です。
出典:「業務改善助成金」厚生労働省
ものづくり補助金<一般型・グローバル展開型>
「ものづくり補助金<一般型・グローバル展開型>」は、主に設備投資に使うことのできる補助金です。他の補助金制度と比べて、審査の難易度が高くなりますので事前準備をしっかりしてから望みましょう。
申請時にはものづくり補助金の「公募要領」に目を通しましょう。申請に必要な書類やルールが記載されています。事業計画書の作成も必要書類のひとつとなりますので、公募要領を見ながら適切な書類を作成しましょう。申請自体は電子申請システムで行います。
小規模事業者持続化補助金<一般型>
最後の補助金は「小規模事業者持続化補助金<一般型>」です。対象は小規模事業者のみとなります。商業・サービス業であれば常時使用する従業員数は5人以下など、事業規模が細かく決まっているので対象になるかどうかを事前に確認しておきましょう。
自社の持続的な経営に向けた経営計画書を作成し、生産性向上のためにPOSレジを導入する場合は給付される可能性があります。売上管理の業務効率化や接触機会を減らし感染リスクを抑える目的でPOSレジを導入する場合は、ぜひ申請してみましょう。
POSレジの補助金については、以下の記事でより詳しく解説しています。気になる方はチェックしてみてください。
まとめ
POSレジの耐用年数や減価償却について解説してきました。POSレジの耐用年数は5年と定められており、5年間に分けて少しずつ減価償却を行っていきます。ただし、レンタルの場合は減価償却処理は不要です。
また、リースであれば、契約内容に応じて減価償却が必要になるので確認しておきましょう。POSレジの導入にはさまざまなメリットがありますが、導入には多額の費用が必要です。補助金を賢く活用することで、費用を抑えて導入することができるでしょう。