毎日多くの方が利用するコンビニ。業務効率化に欠かせないPOSレジが、大きく変わったのはご存知でしょうか。
POSレジの技術革新が進み、セミセルフレジや無人レジの導入が増えてきています。
本記事では、コンビニで使われているPOSレジの使われ方や最新トレンド、各社が力を入れているセミセルフレジ・無人レジについて紹介します。
これから、POSレジがどのように発展していくのかが予測でき、時代に取り残されない店舗経営ができるようになるでしょう。
そもそもPOSレジ・POSシステムとは?
POSレジとは、お客様に商品を販売した際のデータを、販売した時点で記録・集計する「POSシステム」を備えたレジのことです。飲食店や美容室、クリニックなど幅広い業種・規模の店舗に導入されています。
現在のPOSレジは多彩な機能を搭載した製品が多く、記録・集計した販売データから分析や管理を行う機能もあります。他にも、顧客管理機能や在庫管理機能なども備えており、店舗経営に欠かせない存在となっているのです。
通常のレジスターとの違いは、「どの商品を、いつ、どこで、どのようなお客様」に販売したのかを集計・管理・分析できる点です。通常のレジスターはPOS機能がないため、会計を行うためだけのレジといえるでしょう。
POSレジは、店舗経営の改善やマーケティングを行いたい店舗経営者と、スムーズなレジ会計を実現してほしい利用者の想いから生まれた製品なのです。
POSレジとPOSシステムの違いは?
POSレジとPOSシステムは混合されがちですが、明確な違いがあります。
簡単にいうと、便利な機能が「POSシステム」、その便利な機能を搭載したレジのことを「POSレジ」といいます。
POSシステムは商品情報をサーバ上に保存でき、会計金額を正確に計算し、販売データから売上分析をすることができるシステムです。
コンビニ各社で使われるPOSレジの現状・トレンド
ここからは、コンビニ各社で使われているPOSレジの現状とトレンドについて解説します。
コンビニのPOSレジのメーカーは東芝テック、NEC、富士通の3社が中心
現在、ほとんどのコンビニで活躍しているPOSレジですが、メーカーは東芝テック、NEC、富士通の3社がシェアを占めています。ここでは、コンビニ各社で使われているPOSレジメーカーについてそれぞれ見ていきましょう。
東芝テック
東芝テックは、圧倒的な機能性と安定感の高さが特徴のPOSレジシステムを提供しています。
機能面で優れていながらも低コストで導入できるため、POSレジシステムにおいてトップシェアを誇る実績のあるメーカーです。
周辺機器も性能が高く、無線オーダーシステムや電子レシートサービスなど多彩なサービスも提供しています。
総合的な店舗経営をサポートしてくれるため、セブンイレブンやファミリーマートのレジにも東芝テックのPOSレジが採用されています。
NECプラットフォームズ
NECプラットフォームズはNECの子会社として、あらゆる店舗の経営・運用にマッチした製品を提供する企業です。POSレジシステム市場では、東芝テックに次ぐ第二位のシェアを誇ります。
NECプラットフォームズでは、あらゆる店舗にマッチするように製品ラインナップが豊富で、小規模から大規模店舗まで幅広く導入されています。
NECプラットフォームズは、コンパクトなデザインながら高機能が特徴になっており、日本だけでなくアメリカのセブンイレブンにも導入されているのが特徴です。
富士通フロンテック
富士通フロンテックは、東芝テック、NECプラットフォームズに続いて第三位のシェア率を誇る企業です。
さまざまな業種、規模に最適なPOSレジシステムを提供しています。
タブレットPOSレジも取り扱っており、比較的小規模な店舗のレジでも導入することが可能です。
2017年~2019年にかけてコンビニ各社でPOSレジの大幅刷新があった
セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートは、2017年〜2019年にかけてPOSレジの全面刷新を行いました。
全面刷新を通じて3社とも共通しているのが、大画面化による操作性の向上、人手不足の危機を乗り越える方向性です。
しかし、レジのボタン配置や決済対応などには違いが見られます。ここでは、大手3社がPOSレジの全面刷新で変わったことを見ていきましょう。
大幅刷新で変わったこと:セブンイレブン編
大幅刷新でセブンイレブンのPOSレジが変わったことは、「海外の電子マネーに対応した」ことです。
全面刷新する前と同じ東芝テック製のPOSレジを採用し、OSに関してはWindows10が新たに採用されています。
大きな変化としては、これまで対応できなかった「接触ICクレジットカード」に対応したことでしょう。磁気カード決済以上の高セキュリティを実現し、改正割賦販売法の規制にも対応しています。
また、国外では日本よりも早くキャッシュレス決済が普及しており、お金を持ち歩く習慣がない方も多いほどです。
外国人のお客様の支払いに対応するために、幅広いキャッシュレス決済手段で買い物ができる環境づくりは必要不可欠です。そのため、セブンイレブンはさまざまなキャッシュレス決済方法に対応し、日本を訪れた外国人にも利用しやすくなっています。
他にも、高齢者のお客様でも使いやすいように、カスタマーディスプレイを15型と大型ディスプレイに変更し、誰でも画面が見やすく操作しやすい工夫がされているのも特徴です。
大幅刷新で変わったこと:ローソン編
ローソンの場合はどうでしょうか。大幅刷新で変わったことは、
- 全てタッチパネルにしたこと
- 自動釣銭機の導入
- 多言語表示機能の追加
の3つです。
ローソンとNECで共同開発された新しいPOSレジでは、キーボタンを廃止し、15.6型の大型ディスプレイ上でタッチ操作できるようになっています。また、タッチパネルはお客様側にも備え付けられており、スタッフとお客様が1枚のタッチパネルを見ながら会計を進める仕組みです。
自動釣銭機を導入しており、会計時のお釣りは自動で計算して出してくれるので、釣銭ミスの防止につながります。
さらにローソンでは外国人スタッフが働きやすいように、多言語表示機能を搭載したPOSレジも導入しています。外国人スタッフがPOSレジにログインする際に、「中国語」「ベトナム語」「ネパール語」から選んで希望の言語を表示することが可能です。
ローソンは大手3社の中でも積極的に最新のシステムを導入しており、POSレジの新しい常識を作ろうとしているコンビニといえるでしょう。
大幅刷新で変わったことファミリーマート編
ファミリーマートのPOSレジが全面刷新されて大きく変わったことは、
- 電子マネー決済端末とレジの一体化
- 客層キーの廃止
の2つです。
電子マネー決済端末とレジを一体化させ、客層キーを廃止することで、レジの本体サイズが13%縮小し、省スペース化に成功しています。
客層キーを廃止したことで、「顧客情報の収集ができなくなったのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
客層キーを廃止した代わりに、「Tカード」を使った顧客情報の収集に切り替えています。
ファミリーマートを利用するお客様はTカードの利用率が高いため、客層キーを押して収集する方法よりも、正確で多くの顧客情報の収集・分析が可能になったのです。
また、客層キーを廃止したおかげで41個あったボタンが28個にまで減らすことに成功しています。
これにより、スタッフのレジ操作の負担を軽減し、スタッフの満足度向上に期待できるのです。
セブンイレブンに始まり、続々とセミセルフレジ・無人レジ(フルセルフレジ)を導入
セミセルフレジ・無人レジはコンビニでも普及しつつあります。
その先駆けがセブンイレブンで、コロナウイルス蔓延により非接触販売のニーズが高まった2020年9月からセミセルフレジの導入を開始してきました。
セミセルフレジとは、商品のスキャンはスタッフが行い、会計はお客様自身で行うレジタイプのことです。2021年8月までに設置が完了し、セブンイレブンの約9割の店舗に広がっています。
セミセルフレジや無人レジの導入は、非接触販売のニーズの他に、業務環境の改善と人件費の削減に繋げる狙いもあります。
ファミリーマートでは、2015年頃から駅構内にあるコンビニ店舗でセルフレジの導入を進めてきました。
駅ナカ店舗のようなスペースが限られた店舗では、通常のPOSレジを設置するのが難しい場合があります。
ファミリーマートは、12センチの小型セルフレジを採用することで、限られた売り場面積でもストレスなく会計を行えるようにしました。
ローソンでは、1店舗1日あたりでレジに関する業務だけで18時間を使用しており、セルフレジを導入することで、レジ業務を5時間削減できています。
3社とも言えることは、今後セミセルフレジ・無人レジの導入店舗をさらに拡大していくことでしょう。
コンビニ各社が力を入れるセミセルフレジ・無人レジとは?
近年、コンビニ業界でも人手不足が叫ばれており、深夜に働くスタッフも不足しているため、24時間営業が難しくなりつつあります。
コンビニ各社はその解決策の一つとして、セミセルフレジや無人レジの導入を進めているのです。
セルフレジについては、セミセルフレジやフルセルフレジに分けられ、それぞれで操作方法が異なります。
ここでは、セミセルフレジ・無人レジの種類や仕組み、普及率を見ていきましょう。
セミセルフレジ・無人レジの種類【運用方法編】
ここでは、セルフレジ(セミセルフレジ・フルセルフレジ)や無人レジ、キャッシュレス型セルフレジについて解説します。
セミセルフレジ
セミセルフレジとは、商品のバーコードスキャンはスタッフが行い、残りの会計や商品の袋詰めはお客様自身で行うレジのことです。お客様に会計などの一部業務を任せられるため、スタッフの業務量や作業時間を大幅に削減することができます。
セブンイレブンでは、9割の店舗でセミセルフ型のPOSレジが導入されています。
フルセルフレジ
フルセルフレジは、商品スキャンから会計までのレジ業務全てをお客様自身で完結させるレジのことです。
レジにスタッフが介入しないため、省人化・省力化を実現します。ICタグを使用する無人レジとは違い、ICタグを取り付ける作業も必要ないので、比較的導入しやすいのが特徴です。
無人型セルフレジ(ウォークスルー)
無人型セルフレジはその名のとおり、店内にスタッフが不在でもお客様自身で商品の精算が行えるレジのことです。
入店してから購入したい商品を手に取り、ゲートを通り抜けるだけで決済が完了するようになっています。
アメリカでは「Amazon GO」、日本ではJR東日本の高輪ゲートウェイ駅構内にあるコンビニなどがウォークスルータイプの無人型セルフレジです。
どのような仕組みかというと、店内に設置された専用カメラや重量センサーがお客様が商品を手に取る際の動作や商品の場所、圧力などの変化を正確に検知します。
ゲートを抜けて退転すると、事前に登録されたクレジットカードから自動決済される仕組みです。
無人型セルフレジはレジ業務自体がなくなるため、お客様はストレスなく買い物ができ、店舗側は人件費の削減ができるメリットがあります。
キャッシュレス型セルフレジ
キャッシュレス型セルフレジは、スマホに表示したQRコードをレジ画面にかざすことで精算が行えるレジのことです。
前項で紹介した無人型セルフレジとの相性がよく、スマホに決済情報を事前登録してもらい、入場規制をかけることで商品の万引き防止にもなります。
キャッシュレス型セルフレジと無人型セルフレジを導入すれば、商品の補充や廃棄、レジ周りのトラブルなどを最小限の人員で対応することができるでしょう。
また、大量の人員を配置する必要がなくなり、人件費の大幅な削減につながるのがメリットです。
セミセルフレジ・無人レジの種類【仕組み編】
無人レジの精算の仕組みには、大きく分けて「画像認識方式」「ICタグ方式(RFID)」があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
画像認識方式
画像認識方式とは、AIの画像認識技術を利用し、画像に映る商品を認識する技術です。カメラの前に商品を置くとその商品を認識し、会計金額を計算してくれます。
他にも、陳列棚に備え付けられた重量センサーと天井に設置したカメラを組み合わせることで、商品をリアルタイムで認識するシステムも登場しています。天井に設置した複数のカメラが人の動きを追尾することで、会計時に自動で合計金額を算出してくれるのです。
JR東日本の高輪ゲートウェイ駅構内にあるファミリーマートでは、2021年3月に画像認識方式が採用されています。
ICタグ方式(RFID)
ICタグ方式とは、あらかじめ商品につけているICタグを、「RFID」という無線電波を活用して読み取る方法です。
RFID搭載の商品をレジにおくと、商品のICタグを読み取って自動で合計金額を計算してくれます。
ICタグ方式はユニクロや無印良品で採用されているため、利用したことがある方も多いのではないでしょうか。
ただし、全商品にICタグを取り付ける必要があるため、導入ハードルが高いのがデメリットと言えるでしょう。
一方で在庫管理がしやすいこともあり、ICタグ方式を採用している店舗も多いです。
セミセルフレジ・無人レジの普及率
コンビニ業界ではセミセルフレジ・無人レジの普及が進んでいますが、他の業界はどうでしょうか。
スーパーでのセミセルフレジ・無人レジの普及率を見ていきましょう。
全国スーパーマーケット協会などが公表している「2021年スーパーマーケット年次統計調査報告書」によれば、全国278企業の中でセルフレジの設置率は23.5%です。
しかし、セミセルフレジで見ると全体で72.2%となり、多くの企業で導入されていることがわかります。また、大規模展開を中心としている企業での設置率は90%近くを占めています。
保有店舗数が多い企業ほど、セミセルフレジの拡大意向が強くなっているようです。
セミセルフレジ・無人レジのメリット
セミセルフレジ・無人レジを導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、セミセルフレジ・無人レジのメリットについて解説していきます。
人件費の削減につながる
セミセルフレジや無人レジを店舗に導入することで、人件費の削減につながります。お客様自身で会計を行うため、レジにスタッフを配置する必要がなくなるからです。
例えば、店舗スタッフが急遽欠勤になったり、コロナ禍で来店客数が減ったりしても最低限の人員で運営できるのはメリットといえます。
地方では人材確保が難しく、店舗経営を諦める方もいらっしゃいますが、無人レジが導入できればそのような状況でも店舗を運営できます。
さらに、無人レジの導入によって生まれたリソースを別の事業に費やすこともでき、新しいビジネスチャンスを広げられる可能性もあるでしょう。
レジの混雑軽減につながる
レジの長い待ち時間は、お客様にとって大きなストレスです。セミセルフレジや無人レジの導入により、顧客一人あたりの会計時間が短縮されるため、レジ待ちの列がスムーズに進みます。
お客様のストレス解消はもちろん、レジがスムーズになると回転率が上がり、売上アップにも期待できます。
レジの混雑が軽減されれば顧客満足度が向上し、リピート客の獲得にもつながるでしょう。
ヒューマンエラー(レジの打ち間違い)防止につながる
セミセルフレジや無人レジは、基本的にお客様自身で精算を行うため、レジの打ち間違いミスの心配がありません。
レジの打ち間違いが起きると、「レジ締め時に売上データと現金が合わない」という結果になってしまいます。
このような事態が発生すると、店舗経営者とスタッフの信頼関係にも影響するため、ヒューマンエラーが発生しないレジの導入が大切です。
セミセルフレジや無人レジは、スタッフがレジ打ちをする必要がなくなるので、ヒューマンエラー防止につながるでしょう。
盗難防止につながる
無人レジにおいては、「商品の盗難が横行するのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、無人レジの導入で、通常のレジシステムよりも盗難防止につながります。
普段よく目にするレジシステムでは、商品の盗難を見つけるのが困難でした。画像認識方式やICタグ方式により、会計が済んでいない商品を外に持ち出そうとすると機械が反応して知らせてくれます。
無人レジの導入は、これまで人の目で盗難を見つけるのが困難だった仕組みを改善し、店舗経営にとって大きなメリットをもたらしてくれるでしょう。
セミセルフレジ・無人レジのデメリット
セミセルフレジ・無人レジの導入はメリットがある一方で、いくつかデメリットもあります。メリットだけでなく、以下のデメリットも知っておきましょう。
導入費用・ランニングコストが大きい
まず挙げられるデメリットは、導入費用・ランニングコストが大きいことです。セミセルフレジや無人レジは、最新のシステムを搭載しているため、通常のレジよりも高価な製品です。
また、全商品にICタグを取り付けたり、店内にAIカメラを設置したりなどもコストが大きくなる要素になります。高額な導入費用から、なかなか導入に踏み切れない店舗が多いかもしれません。
しかし、これらの初期・導入費用は、一度導入してしまえば回収できるコストといえます。なぜならセミセルフレジや無人レジの導入により、人件費の削減につながったり、売上アップに貢献したりなど、長期的なメリットが期待できるからです。
どうしても高額な費用に躊躇してしまう場合は、レンタルやリース、補助金の活用がおすすめです。導入費用やランニングコストを抑えて導入できる可能性もあるので、検討してみてはいかがでしょうか。
顧客が操作を理解できないおそれがある
セミセルフレジや無人レジは、比較的新しいシステムです。そのため、機械操作が苦手な方や高齢者の方の中には操作を理解できない恐れがあります。
「使い方を教えてほしい」という顧客がいた場合、店内にスタッフがいなければ操作方法を聞くことができません。
トラブルが発生してもすぐに対応できないのはデメリットといえます。
対策としては、
- レジの近くに操作方法を記載した案内を置く
- スタッフが操作方法についてのサポートに入る
- 無人レジの近くに専用電話を設置しておく
などを行い、セミセルフレジや無人レジでトラブル発生しても、すぐに対応できるようにしておくとよいでしょう。
コンビニ大手各社のセミセルフレジ・無人レジ戦略
ここでは、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの大手コンビニが取っているセミセルフレジ・無人レジ戦略について解説します。
基本的な考え方
セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社がPOSレジを導入するうえで、以下の3軸を重要としています。
- 機能は多い
- 操作は簡単
- スペースを取らない
近年、コンビニ業界では人材不足に悩まされており、24時間体制の営業が難しい状況です。そのため、業界未経験のスタッフや外国人スタッフを積極的に雇ってレジ業務をしてもらっています。
レジ業務だけでなく、宅急便の受付や公共料金の支払い、発注業務など多くの業務があります。未経験の方や外国人スタッフでも問題なく業務ができるように、POSレジの導入が進んでいるのです。
コンビニとPOSレジの相性がよい理由
コンビニは世界で最も進んだ情報システムを持っていると言われており、その頼みの綱となるのがPOS情報です。
1チェーンが情報を収集するために投資する額は、約200億円にものぼります。それほどの投資をして顧客情報を集めることは、コンビニの利益増加のためにも重要なのです。
POSレジの導入はそれを可能にします。商品を販売した時点で情報が蓄積されていくだけでなく、データから分析を行うこともできます。
POS情報から売上分析をすることで、仕入れにも活かすことが可能です。その結果、在庫切れによる機会損失を減らし、より効率的な売上アップにつなげられるのです。
各社でわかれる「客層ボタン」の扱い
2017年〜2019年にかけて、セブンイレブン・ファミリーマート・ローソンの各社がPOSレジの大幅刷新を行いました。
その中で、店舗スタッフがお客様の年代と性別を判断する「客層ボタン」をファミリーマートとローソンは廃止し、セブンイレブンは残しています。廃止した理由として、コンビニ業界を悩ます人手不足に加え、各社の顧客データ活用に対する戦略が異なるためです。
また、ファミリーマートやローソンでは、スタッフが押す客層ボタンの正確さが低く、データとして役立てるには頼りなかったという理由もあります。では、客層ボタンを廃止したローソンやファミリーマート、客層ボタンを残したセブンイレブンはどのように顧客情報の収集を行っているのでしょうか。
ローソンでは共通ポイントカード「Pontaカード」の利用率が高く、客層ボタンよりも正確で購買動向を分析ができると判断しています。
ファミリーマートも同様で利用率が高い「Tカード」から情報収集し、データを活用してマーケティング戦略に役立てています。
一方で、客層ボタンを残したセブンイレブンでは、ポイントカードの利用率が2割程度と、ローソンやファミリーマートよりも低いのが課題です。
そのため、お客様の年齢や性別をスタッフがボタンで判断するようにし、セブンイレブンのポイントカード「nanaco(ナナコ)」に登録された顧客データと掛け合わせて分析することが最適と判断しているようです。
ファミリーマートのセミセルフレジ・無人レジの取り組み
ここからは、ファミリーマート・ローソン・セブンイレブンが行っているセミセルフレジ、無人レジの取り組みを紹介します。まずはファミリーマートの取り組みについてみていきましょう。
無人レジ(セルフレジ)の運用
無人レジは店舗にスタッフが不在の状態でも、お客様自身でレジ会計が行える仕組みです。
ファミリーマートのセルフレジは、シンプルかつコンパクトな設計で東芝テック製のレジが採用されています。
タッチパネル式モニター画面の下にバーコードスキャナーとレシートの発券口が搭載されており、本体の脇にカードリーダーとハンディスキャナーが配置されているのが特徴です。お客様が商品を購入する際にスキャナで商品を読み取り、クレジットカードや電子マネーなどで決済を行います。
他にも、購入したい商品を手に取ってゲートを通り抜けるだけで決済が完了する無人レジもファミリーマートでは導入されています。セルフレジ・無人レジの導入により、会計時間の短縮や人手不足の解消に効果的です。また、人件費の削減に加え、教育コストを抑えることもできるでしょう。
最新の取り組み
ファミリーマートでは2024年度末を目標に、店内にスタッフがいない無人決済店舗を全国に1,000店舗出すと目標を掲げています。その1号店を東京都内にオープンし、通常店舗の3割ほどの約55平方メートルとコンパクトなつくりで商品を提供しています。
買い物の仕方は「入店→商品を選ぶ→決済→退店」と非常にシンプルです。まずは専用ゲートをくぐって入店し、商品を選びます。陳列されている商品を手に取ると、天井や壁に設置されたカメラと棚の重量センサーが反応し、リアルタイムで把握できる仕組みです。
決済エリアに立つと、POSレジに商品名と会計金額が表示されます。万が一のトラブルに備えて、レジ画面にはコールセンターにつながるボタンが設置されているのも特徴です。
また、バックヤードにスタッフが1人待機しているため、問題が発生した場合は対応できるようになっています。
実際に利用した顧客からの評判も上々で、「買い物がスピーディに済ませられる」「アプリのダウンロードや会員登録などが必要ないから嬉しい」などの声もあります。
2022年1月時点では、東京都内と埼玉県内で各2店舗ずつ無人決済店舗が稼働している状況です。
ローソンのセミセルフレジ・無人レジの取り組み
次に、ローソンのセミセルフレジ・無人レジの取り組みを解説します。
無人レジ(セルフレジ)の運用
2017年から導入が始まったローソンのセルフレジには、「多言語対応」と「フルタッチスクリーン」の機能が搭載されています。
- 商品のスキャン
- 「購入する」ボタンの選択
- 決済手段の選択
といった流れで簡単に決済が可能です。クレジットカードや電子マネー、バーコード決済などのキャッシュレス決済のみの対応になっています。
ローソンのPOSレジには、NECプラットフォームズと共同開発のPOSが使われているのが特徴です。
フルタッチスクリーン採用による機能的なデザインが評価され、2018年度にグッドデザイン賞を受賞しています。
最新の取り組み
ローソンは2022年10月に商品を持ったままゲートを通り抜けることで決済ができる無人レジ「ウォークスルー決済店舗」の「Lawson GO」をオープンしました。
Apple ID/Googleアカウント/LINEアカウントのいずれかを事前登録しておき、専用アプリに表示されたQRコードをゲートにかざして入店が可能です。
商品を手に取ると店内設置のカメラが追尾し、商品が置かれた棚の重量センサーによってどの商品を手に取ったのかAIが判別します。商品を持ったまま店外に出ると、事前に登録した決済手段から自動で決済できる仕組みです。
店内にはスタッフが在中しているものの、商品の品出し作業を行うだけでレジ業務は行いません。ローソンはセルフレジを併設した店舗拡大を見据えており、今後ますます無人レジ店舗の導入が進むと予想されています。
セブンイレブンのセミセルフレジ・無人レジの取り組み
最後に、セブンイレブンのセミセルフレジ・無人レジの取り組みをみていきましょう。
無人レジ(セルフレジ)の運用
セブンイレブンのセルフレジの特徴は、店舗スタッフが商品のバーコードを読み取り、顧客が精算を行う「セミセルフレジ」を導入しています。
セブンイレブンのセミセルフレジには東芝テックのレジが採用されており、全国のセブンイレブン約2万1,000店のうち9割に導入されています。
今後はセブンイレブンにも、お客様自身で商品スキャンから精算ができるフルセルフレジの全国展開を進めるようです。
最新の取り組み
セブンイレブンでは、非接触・空中ディスプレイ技術を採用した「デジPOS」とレジに並ばずにスマホ決済だけで完了する「セブンスマホレジ」の導入が拡大しています。
非接触・空中ディスプレイ技術採用の「デジPOS」とは?
デジPOSの特徴は、ディスプレイに触れることなく空中に浮かんだ映像によりタッチパネル操作ができる最新の機器です。
空中ディスプレイをPOSレジに採用した実証実験は世界初で、新しい買い物体験の提供や店舗スタッフの安全・安心なレジ操作、省スペース化などが目的です。
「デジPOS」では、お客様自身で商品バーコードを読み取り、会計操作までを行います。
スマホだけでお買い物が完了する「セブンスマホレジ」とは?
「セブンスマホレジ」はレジに並ばずに、顧客のスマホ決済で会計が完了する最新のシステムです。
利用手順を簡単に説明すると、
- 専用アプリをスマホにダウンロード
- アプリを起動して「入店QR」を読み取る
- 購入する商品のバーコードを読み取る
- 購入内容を確認して決済
- 決済完了後、「退店QR」を読み取るか、専用リーダーにQRをかざして終了
といった手順で買い物が行えます。
セブンイレブンはこれら最新の取り組みを積極的に行い、顧客の利便性を高めるために導入に力を入れているのです。
コンビニでセミセルフレジ・無人レジが進むことの弊害も
ここまでコンビニ各社のセミセルフレジ・無人レジについて解説してきましたが、導入が進むことで弊害も生まれます。セミセルフレジや無人レジの導入は、業務効率化を図れ、スタッフの業務負担の軽減につながるため、良いことしかないようにも思えるでしょう。
しかし、新型コロナウイルスの影響も相まって、地域住民との会話が途切れ、店とお客様との関係性が薄れつつあるのです。コンビニの機能として、「自宅や職場から近いから便利」というだけでなく、心理的な近さ=親近感もあって発展してきました。
もちろん、心理的な近さを好まないお客様も多く、セミセルフレジや無人レジの導入はありがたい存在となるでしょう。そんな環境下でもお客様に選ばれる店舗になるには、やはり接客も重要な要素の一つになります。
セミセルフレジや無人レジの導入が進むことで、地域の目としての機能が薄れる弊害は知っておかなければなりません。
これからコンビニのレジはどうなる?
前章では、コンビニ各社の取り組みを紹介してきました。では、これからのコンビニレジはどうなるのでしょうか。
ここでは、今後のコンビニレジの動向を考察していきます。
無人コンビニの登場でセルフスキャンシステム搭載のレジが普及する?
大手コンビニのファミリーマートでは、2024年度末をめどに約1,000店舗に無人レジの導入を拡大する方針を示しています。
無人レジが普及すれば、その会計の際に利用するセルフスキャンシステム搭載のレジがますます普及していくと考えられるでしょう。しかし、無人レジを先駆けて導入した中国では無人レジ店舗が普及せず、2018年頃には衰退と閉店が進んでいます。
失敗した理由に挙げられるのが、
- 商品の価格を上げたから
- 無人レジ利用にかかる準備と操作が面倒だった
- 会計が正確ではなかった
などがあります。
当時の無人レジ店舗では、RFIDタグを商品につけて管理するのが一般的でした。このRFIDのコストが1つあたり5円と高く、その分商品の価格を上げることになったのです。
あえて割高な店舗で買い物をする方が少なく、利用率が低下しました。また、無人レジの利用には専用アプリの準備が必要で、最新の機器に対して操作が慣れずストレスを感じる方も多いのが原因です。
当時のRFIDタグは精度が低く、会計金額が正確ではないこともありました。これらの理由から、無人レジ店舗が普及せず、中国では衰退しているのです。
現在では、「画像認識方式」「ICタグ方式(RFID)」の技術が登場し、上記の問題点が解消されつつあります。
無人レジの導入は、顧客の利便性向上や人件費削減などメリットも大きいです。国内の大手コンビニ各社も、試験的導入から本格的な導入へ移行しつつあります。
今後ますます無人レジの拡大が期待され、セルフスキャンシステム搭載のレジが普及していくでしょう。
レジのない店舗が登場:AmazonGO
2016年頃に登場した、レジのない店舗「Amazon GO」。お店から完全にレジをなくした画期的なシステムで、当時注目されていました。
入店時にスマホで認証を行い、商品を陳列棚から手に取って専用ゲートを通り抜けるだけで決済が完了する仕組みです。
無人レジの登場により、さまざまな研究機関や企業が実証実験や検証を行っています。実際に大手コンビニのセブンイレブンやローソン、ファミリーマートでも導入店舗が増えつつあります。
「レジのない店舗なんて映画の世界みたい」というような遠い未来の話ではなく、すでに現実となってきているのです。
まとめ
本記事では、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの大手コンビニのセミセルフレジ・無人レジについて解説してきました。2017年〜2019年にかけて大手コンビニ各社でPOSレジの大幅刷新があり、セミセルフレジの導入が一気に広まりました。
各社のPOSレジにはそれぞれ特徴がありますが、共通して言えるのが
- 機能が多い
- 操作が簡単
- スペースを取らない
の3点が挙げられます。
ここまで導入が普及した理由には、深刻な人手不足が挙げられ、24時間営業が難しくなりつつあるからです。
店内にスタッフが不在でも、購入から決済までが完了する無人レジの導入も徐々に広がりを見せています。
本記事で解説したコンビニ各社のPOSレジ事情をおさえて、今後求められるニーズに応えられるようにしましょう。